工藤直子「てつがくのライオン」を読む。そして合唱への道。

2009.01.14(月) 曲順について

 「曲順はどうしますか?」と聞かれて,「まだ全然決まってないんですよ」と答えたら,コール・グローリア指揮者の加藤さんはもう考えられたようで,「雨」→「葬式」→「心」→「夜光虫」でどうですかと仰った。「雨」は前奏がいかにも「最初の曲」だそうだ。
 確かに「夜光虫」(譜例2)はスピード感があってソナタの第4楽章。また,葬送行進曲は「英雄」でもベートーヴェンやショパンの「葬送」ソナタでも2楽章だ。譜例1の「心」はアカペラの完全ユニゾン(途中でピアノソロが入るが)の断片的な代物だから中間か。
 調性の接続が未確認だというので,調べてみたら,平行調や同主調で,途中ピアノによる音取りも不要。むしろ attacca に感じられる。曲集か組曲のどちらか?という話し合いもあったが,この曲順なら組曲になっている。
 すでに指揮者や伴奏者によるアナリーゼが相当進んでいることがわかり,その熱心さに頭が下がりました。


2009.01.04(日) 作曲真っ最中

 ここに「てつがくのライオン」という一冊の詩集がある。(工藤直子・詩,佐野洋子・画 理論社“フォア文庫”1988)「適当に詩を選んでください」とお願いしたら,ほどなく合唱団のIさんから「はい」と渡された。その後,ぱらぱらとめくっていたら,「トタン屋根に雨が降り あれは秋の音」という一節が目に止まった。
 「猫は浮かれて歩き」の可愛さと「わたしの肩は冷たい」などやや鬱屈した感情が交差するところに魅力を感じて,ちょっとピアノに向ってみたら,珍しくすらすらとメロディーが浮かんできた。(うまくいくときは,帽子から万国旗を引き出す手品のような感じで曲が出てくる)形式も,A−B−A−C−Aの形式にうまくおさまった。
 これが比較的素朴な曲になったので,組曲にするためには,スピード感のある曲も必要である。そこで見つけたのが「夜光虫」。彼氏が少年時代の思い出を語る。夏の夜の暗黒の海で,クロールの指先から夜光虫が光のシャワーを輝かせるという,魅力たっぷりな詩。心地よい8分の6拍子に載せて,光のシャワーはピアノのアルペジオで表現しようとした。
 それらは,「たくさんの心」に属していた。「てつがくのライオン」は詩集5作の集合体で,「たくさんの心」はその一作。最初の詩は「葬式」と題して,たぶん作者自身の父親の死を,他の詩とは異なり具体的に語っている。最後の詩が「はじまり」。
 「たくさんの心」は,不思議な配列である。読めば読むほど時系列を逆転させて並んでいる印象が強まる。最初の「葬式」で記述された「孫」は作者のこどもだと思う。それから恋人との日々をさかのぼり,少女時代の感傷を描き,最後に「はじまり」でこどもに戻る。
 さて,組曲(当然数曲分抜粋だが)にしたら,どう配列すべきだろうか?

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